産前産後リハの需要の母数はどれくらい?
全国の出生数は2025年に67.1万人まで減り、京都市は年7,090人です。産後の母親だけを顧客と考えると、母数は毎年小さくなっていきます。
- 2025年の出生数(概数)は671,236人で、前年より14,937人減り、10年連続で過去最少を更新しました。合計特殊出生率は1.14で過去最低です。 出典:nippon.com(厚生労働省 人口動態統計 概数、2026年6月公表)
- 2025年の速報値は705,809人(外国人などを含む)、2025年上半期の速報は339,280人で前年同期比3.1%減でした。 出典:nippon.com(厚生労働省 人口動態統計 速報)
- 京都市の2024年の出生数は7,090人で前年比602人減、合計特殊出生率は1.01(全国1.15、京都府1.05)でした。2023年は7,692人です。 出典:京都市 総合企画局「令和6年 京都市の合計特殊出生率」
京都市で産後1年以内の母親は、ある時点でおおよそ7,000人前後いる計算になります。毎年約8%ずつ減っているため、産後だけを対象にした事業は、何もしなくても市場が縮むことを前提に考える必要があります。
産後や中高年で尿漏れに困っている人はどれくらい?
産後は2〜3割台、40歳以上の女性では4割前後が尿漏れを経験しています。しかも多くの人が受診も相談もしていません。
- 国内の研究では、分娩後早期の尿失禁の発症率が30.8%、産後4〜9か月で34.6%と報告されています。 出典:科研費 研究成果報告書 23593283(引用されている高岡ら2013・2017)
- 妊娠前に尿漏れがなかった163人を追った前向き研究では、妊娠初期で26%、妊娠後期で63%が尿漏れを経験し、産後も20%台で推移しました。 出典:科研費 19K11060 研究成果報告
- 国内の疫学研究では、40歳以上の女性の尿失禁の割合は43.9%とされています。別の調査では女性全体で34.5%、40歳代でも30.4%でした(調査方法により幅があります)。 出典:CareNet・日本公衆衛生雑誌 55巻7号
- 2023年に約20年ぶりの全国疫学調査(20〜99歳の6,210人)が行われ、40歳以上の下部尿路症状の有病率は82.5%、過活動膀胱は13.8%で2002年より増えていました(男女合計)。 出典:CareNet(International Journal of Urology 2024年3月の報告)
妊娠中の後期には6割以上が尿漏れを経験するため、産前からの関わりは「お客様との最初の接点」として価値があります。産前で信頼を得て、産後のケアにつなげる流れが作れます。
産前産後・尿漏れリハの需要はこれからどうなる?
出産の件数は減りますが、尿漏れの需要は高齢化で増え、国の産後ケア支援と専門学会の設立で「骨盤底は専門家に診てもらうもの」という認識が広がりつつあります。
| 要素 | 方向 | 根拠 |
|---|---|---|
| 出生数 | 減る | 2025年は67.1万人。10年連続で過去最少(人口動態統計) |
| 中高年女性の尿漏れ | 増える | 40歳以上の過活動膀胱は2002年より2023年の方が多い。高齢化で対象人口そのものが増える |
| 国の産後ケア事業 | 広がる | 2019年の法改正で市町村の努力義務に。実施自治体は2014年度の29から2022年度に1,462(約85%)へ。2024年度の国の補助金は約60.5億円 |
| 専門家の層 | 育ちつつある | 2025年に「日本ウィメンズヘルスケア理学療法学会」が設立。ただし骨盤底の多くは自費の領域で、広がりは途上 |
| 海外の標準 | 先例あり | フランスでは産後に骨盤底リハを約10回処方するのが標準で、公的保険の対象 |
- 産後ケア事業は2019年の母子保健法改正で市町村の努力義務になり、実施自治体は2022年度に1,462まで増えました。 出典:BCN(こども家庭庁データ)・財務省 予算執行調査(2025年度)
- 2025年に日本ウィメンズヘルスケア理学療法学会が設立されました。女性の骨盤底のリハは比較的新しい分野で、多くが自費診療の対象とされています。 出典:PT-OT-ST.NET 座談会記事
- フランスでは産後8週以降に理学療法士や助産師が骨盤底リハを10回提供するのが標準で、政府の医療保険の対象とされています。一方でフランスのガイドラインは、症状のない人への予防目的の実施は根拠が不足しているとしています。 出典:国際禁制学会(ICS)抄録・フランス産後リハ ガイドライン(PubMed)
骨盤底を専門に見られる担い手はどれくらいいる?
理学療法士自体は毎年1.1万人ずつ増えていますが、女性の骨盤底を専門にする人はごく一部です。「産後骨盤矯正」をうたう整体は多い一方、評価と根拠のある運動指導をする専門家は希少です。
- 理学療法士の国家試験合格者は2025年が11,373人、2026年が11,156人でした。 出典:厚生労働省 第61回国家試験合格発表・第60回
- 日本理学療法士協会の会員数は2024年時点で100,979人です。 出典:World Physiotherapy(Japan)
- 京都・大阪・神戸で「理学療法士が担当し、尿漏れまで対応する産後ケア」を明示する施設は、今回の検索では見つかりませんでした。見つかったのは産後骨盤矯正の整体院・整骨院が中心です。 確認方法:Web検索(2026-10-31時点)。詳細な施設数の実査は詳細調査で更新します
つまり、供給側は「数は多いが根拠の薄い骨盤矯正」と「根拠はあるが数の少ない理学療法士の骨盤底リハ」に分かれています。後者の立ち位置を取れれば、価格競争に巻き込まれにくくなります。
関西の競合はどんな価格で何を提供している?
関西の産後骨盤矯正は初回3,000〜5,500円、通常8,800〜12,000円が中心です。理学療法士の骨盤底指導は病院の自費でも60分4,000円と安く、専門性を価格に乗せている店舗はまだ少数です。
| 施設 | エリア | 内容 | 価格 | 資格 |
|---|---|---|---|---|
| Human Stretch 京都錦店 | 京都市中京区(河原町) | ストレッチ専門。産後の骨盤矯正を扱う | ¥2,700〜6,900 | 記載なし(体験価格・通常17,200円表記) |
| 太秦ときわ整体院 | 京都市右京区 | 産後骨盤矯正 | 初回¥5,500 | 通常¥8,800(税込) |
| うの整骨院 | 京都市中京区(二条) | 産後骨盤矯正 | ¥3,000 | 整骨院(非課税表記) |
| ほんじょうレディース整体 | 大阪 | 産後骨盤矯正の専門 | 初回¥5,500 | 通常¥12,000。院長が担当、PTの記載なし |
| 大阪狭山市の整骨院・整体院 | 大阪府大阪狭山市 | 産後骨盤ケアの回数券 | ¥4,104〜4,389/回 | 12回券換算・別途初検料あり |
| 参考:病院の女性PT指導 | 茨城県牛久市 | 骨盤底筋体操のマンツーマン指導 | 60分¥4,000 | 女性理学療法士。2回目以降30分¥2,000 |
出典:Human Stretch 京都錦店・いこーよ(太秦ときわ整体院)・エキテン(京都市中京区 産後骨盤矯正)・ほんじょうレディース整体 LINE・エキテン(大阪狭山市)・城仁会 牛久。価格は掲載時点のもので変わる可能性があります。
空いている立ち位置
- 理学療法士が骨盤底を評価し、尿漏れまで扱うと明示している自費の専門店舗(京都・大阪・神戸で検索に出てこない)
- 妊娠中から更年期・中高年まで、女性の骨盤底を一貫して見る店舗
- 「骨盤の歪みを矯正する」ではなく、評価と運動指導で再発を防ぐという説明をしている店舗
理学療法士が自費で産後リハを開業するときの注意点は?
理学療法士に開業権はなく、治療としての理学療法は医師の指示が前提です。自費では「予防・コンディショニング」として提供し、治療や完治をうたわない設計にします。
- 2013年11月27日の厚生労働省医政局医事課長通知(医政医発1127第3号)で、介護予防など身体に障害のない人への業務は、医師の指示がなくても「理学療法士」の名称を使って行ってよいと整理されました。 出典:荒川区掲載資料(通知の内容)・PT-OT-ST.NET
- 保険でリハを行うには医師の指示が必要です。産後の尿漏れを保険で継続的に診てもらえる場は限られており、多くが自費の領域です。 出典:PT-OT-ST.NET 座談会記事
- メニュー名と広告では「治療」「治る」「完治」を使わず、「骨盤底のコンディショニング」「尿漏れ予防の運動指導」と表現する
- 症状が強い人や妊娠中の人は、主治医の確認を取ってから受ける流れを決めておく
- 産婦人科・泌尿器科と紹介し合える関係を作り、医療が必要な人を確実に医療へ戻す
- 賠償責任保険に加入する(妊娠中の施術を扱うため必須)
この節は公開情報の整理で、法的助言ではありません。開業前に通知本文と所管の保健所・専門家に確認してください。
専門だけで売上は立つ?京都市での試算
1人で月100回・単価8,000円なら月80万円です。産後だけで埋めると市内の出産した人の約3%を毎年集める必要があり、対象を中高年の尿漏れまで広げると必要な割合は大きく下がります。
単価8,000円・平均6回は仮定です。関西の整体の通常価格(8,800〜12,000円)と、理学療法士の病院自費(60分4,000円)の間に置きました。産後だけで年200人を集め続けるのは、紹介の仕組みがないと簡単ではありません。中高年の尿漏れまで対象に入れると母数が大きく増え、通院も長く続きやすくなります。
専門で独立して勝つには何をすればいい?
「産後の骨盤矯正」ではなく「女性の骨盤底の専門家」として看板を出し、入口を医療・自治体・産前に広げ、出口を更年期・中高年まで伸ばすことです。
- 対象を広げる。妊娠中→産後→育児期→更年期→中高年の尿漏れ・骨盤臓器脱まで、同じ専門家が見る店舗にする
- 紹介の入口を作る。産婦人科・助産院・泌尿器科との連携、自治体の産後ケア事業(デイサービス型など)への参加を探る
- 価格を専門性に合わせる。初回は評価込みで丁寧に行い、整体の「初回3,000円」とは別の土俵で勝負する
- 説明を根拠ベースにする。「骨盤の歪み」ではなく、骨盤底筋訓練の効果と評価の結果で説明する
- 子連れで来られる環境にする。産後の来店の壁を下げる
よくある質問
- 産前産後・尿漏れリハだけで独立してやっていけますか?
- 産後だけに絞ると京都市規模の商圏では母数が足りにくく、妊娠中から中高年の尿漏れまで対象を広げ、医療機関や自治体と連携できれば成り立つ見込みが高い、というのがこの調査の見立てです。
- 産後に尿漏れが起きる人はどれくらいいますか?
- 国内の研究では、産後早期で約31%、産後4〜9か月で約35%、前向き追跡研究では産後も20%台で推移したと報告されています。
- 理学療法士は自費で産後リハを開業できますか?
- 理学療法士に開業権はなく、治療としての理学療法は医師の指示が前提です。2013年の厚労省通知で、身体に障害のない人への予防目的の業務は医師の指示が不要とされたため、自費では予防・コンディショニングとして提供し、治療をうたわない設計が必要です。